読書

風の歌を聴きながら

長らく戴きっぱなしで不義理をしていたので、本の紹介を。 東瀬戸サダエ著『風の歌を聴きながら』は、以前紹介した『シナプスの笑い』のラグーナ出版が昨年11月に出版した単行本で、45年前に統合失調症を発症し、22年間にわたる病棟生活をおくった著者の「自…

ぶら下げ2

『谷川俊太郎詩集』(思潮社)読んでたらこんなのがあった。 1965年3月の第2刷で印刷(活版)は宝印刷。この行にある全角アキ2つを二分四分にして行末を揃えたいところだけど、たぶん文字の横の並びを優先したんだろう。それとも調整が面倒だったのかな。前…

ぶら下げ

初めてBL(Boys Love)を読んだ。『お仕事ください!』(音理雄、もえぎ文庫・学習研究社)という小説で、元やくざの若頭だった印刷会社の社長と、気の弱い新入り営業マンとの恋愛話だった。印刷会社といってもオフではなく活版。有名な活版印刷所がモデルら…

美しい日本語ってなんだろう

あのトンデモ本を読んでから、私にとっての美しい日本語ってなんだろう、ってことを考えた。懐かしい紀州弁はひとまず措くとして、文学作品でまず思い浮かんだのが宮沢賢治の「やまなし」。小学校の教科書で読んだときにはわからなかったけど、物心ついてか…

『日本語が亡びるとき』を読んでみた

こないだ(2/13)一応読んどこうかと思ったので、『おやじがき』(内澤旬子、にんげん出版)と『紙魚のたわごと』(庄司浅水、朝日新聞社)をはさみ、『日本語が亡びるとき』(水村美苗、筑摩書房)を読んでみた。 で、やっと読み終えようかというところで安…

日本語は亡びるのか?

先週『ユリイカ』2月号の表紙に「特集*日本語は亡びるのか?」という文字を見つけて思わず手にとった。私の知らぬ間に第三次世界大戦でも始まったのかと思ったのだ。なんか大変なことが書かれているのでは!と思い、さっそく買って読んでみたんだけど、最近…

全部いい

もっと戦争をしゃぶってやればよかったな。もっとへとへとになるまで戦争にからみついてやればよかったな。血へどを吐いて、くたばってもよかったんだ。もっと、しゃぶって、からみついて──すると、もう、戦争は、可愛いい小さな肢体になっていた。 やっぱ安…

誰にも読まれなかった本

『だれも買わない本は、だれかが買わなきゃならないんだ』(都築響一、晶文社)という本を読んだあと、つづけて『人の読まない本を読む』(山下武、本の友社)という本も読んでみた。で、思ったのは、今までに誰にも読まれなかった本というのはあるんだろう…

ケータイ小説をケータイで読んでみた

ケータイ小説はもういいか、と思っていたんだけど、試しにケータイを使って『恋空』を読んでみたところ(といっても、ほんの30ページほどだが)、紙本ではあんなに違和感があった文章も、ケータイではけっこうすんなりと読めることに驚いた。ちょうど下から…

ケータイ小説の設計図を読むことは旅をすること

『ケータイ小説は文学か』(石原千秋、ちくまプリマー新書)という本を読んでみた。実話テイストのケータイ小説に「リアリティー」はないが、「リアル」はある。本物ではないフィクションにリアリティー(本物らしさ・現実らしさ)を感じさせることが「作者…

『恋空』をじっくり読む7 ラスト

※かなりストーリーについて触れるので、これから『恋空』を読もうと思っている人は、下の文章は読まない方がいいです(最初は→『恋空』をじっくり読む1)。 いよいよ「最終章 恋空 koizora」。 さて、年が明け、成人式を終えた美嘉は着物を着たままヒロの待…

『恋空』をじっくり読む6

※かなりストーリーについて触れるので、これから『恋空』を読もうと思っている人は、下の文章は読まない方がいいです(最初は→『恋空』をじっくり読む1)。 「六章 恋旅 koitabi」。 大学に入って初めてのクリスマス・イブ。美嘉は優と同棲中。二人でイチャ…

『恋空』をじっくり読む5

※かなりストーリーについて触れるので、これから『恋空』を読もうと思っている人は、下の文章は読まない方がいいです(最初は→『恋空』をじっくり読む1)。 さて、いよいよ下巻に入る。上巻だけで読むのを止めようかと思ったが、続けろとリクエストがあった…

『恋空』をじっくり読む4

※かなりストーリーについて触れるので、これから『恋空』を読もうと思っている人は、下の文章は読まない方がいいです(最初は→『恋空』をじっくり読む1)。 都が京から東の方へ移され久しく忘れていた戦で血なまぐさくなった頃京の西陣で、桓武天皇の頃から…

『恋空』をじっくり読む3

※かなりストーリーについて触れるので、これから『恋空』を読もうと思っている人は、下の文章は読まない方がいいです(最初は→『恋空』をじっくり読む1)。 さて、1章の続きから。 ヒロの元カノの執拗な嫌がらせメールが続くなか、美嘉の妊娠がわかる。美嘉…

『恋空』をじっくり読む2

※かなりストーリーについて触れるので、これから『恋空』を読もうと思っている人は、下の文章は読まない方がいいです(最初は→『恋空』をじっくり読む1)。 さて、「一章 恋来 koirai」を読む。章扉、横組なのに漢数字なのが気になる。ページをめくると柱も…

『恋空』をじっくり読む1

岩本素白を読みながら、やっぱり日本語っていいなぁ、日本人に生まれてよかった、などと大げさなことを感じていた。で、次に読む本、明治から昭和初期ぐらいまでの日本語を探そうと書店に行って真っ先に目に留まったのが『恋空 〜切ナイ恋物語〜』(美嘉、ス…

至福の時

平日の真つ昼間、喫茶店で珈琲を飲みながら岩本素白「山居俗情」を味はふ。外は雨。至福。

本の目利き

ワケあって3月半ばから急にヒマになったので龜鳴屋本を続けて読んだ。伊藤人譽氏の『馬込の家 室生犀星断章』『續人譽幻談 水の底』。選び抜かれた言葉、無駄のない的確な比喩など、素晴らしい日本語に何度もシビレた。擬古文調の『稚兒殺し 倉田啓明譎作集…

仕事の品格

安吾忌も近いことだし、という訳ではないのだが、こないだジュンク堂書店池袋本店で見つけた『安吾碑を彫る』(丸山一、考古堂書店)という本を読み始めた。著者の丸山氏は元新潟放送の方で、寄居浜にある坂口安吾の石碑「ふるさとは語ることなし」の元にな…

【新釈】走れメロス 他四篇

こないだ買った『【新釈】走れメロス 他四篇』(森見登美彦、祥伝社)を読んだ。新釈「桜の森の満開の下」があるからという理由だけで買った本だし、昨年のマンガ版「桜の森〜」という前例もあったから全く期待してなかったんだけど、これが面白かった。 「…

ネットの力に魂消る

本館の方のカウンターが異様なスピードで増えていくのでアクセスログを調べてみたら、オマケで載せていたお薦め本リストのページにアクセスが集中していた。はてなブックマークにエントリーされたのがその原因のようだ。1時間に1000アクセス。1000までしかカ…

大往生の島

2007年最初の読了本は『大往生の島』(佐野眞一著、文春文庫)。高齢化率日本一の山口県周防大島の、とくにそのすぐ隣にある離島、沖家室(おきかむろ)島のルポだ。一人暮らしの老人が大半の過疎の島でありながら、行政に頼らず、互いに助け合いながら明る…

シナプスの笑い

今年3月に創刊されたばかりの雑誌『シナプスの笑い』(年3回発行)の創刊号と第2号を読んだ。精神障害体験者および関係者の作品を中心とした雑誌で、発行元は「精神をつなぐ・ラグーナ」。この雑誌に関わっている友人に、既刊分2冊を送ってもらったのだ。 「…

安吾のいる風景

『安吾のいる風景』(坂口綱男 文・写真、春陽堂書店)を読んだ。自称「作文アレルギー」という坂口綱男氏だが、なかなかどうして、簡潔で無駄がなくユーモラスな語り口にのせられ、一気に最後まで読んでしまった。「フールオンザヒル」云々とかお好み焼き「…

秋風と母

尾崎士郎が坂口安吾に宛てた書簡を読んでいると、尾崎氏の豪放磊落、大らかな性格が伝わってくるようでとても気に入り、小説作品を読んでみたくなった。尾崎士郎といえば『人生劇場』なんだろうけど、安吾ファンとしてはやはりコレというわけで、安吾撰輯に…

クリスマス・イブにカフカ

今夜はクリスマス・イブで世の中は妙に楽しげだというのに、私はというと独りでフランツ・カフカの『アメリカ』(角川文庫)を読んでいた。ちょっと事情があって嫁はんが実家に帰っているのだ。別に離婚調停中なわけではない。 そもそもカフカを読み出したの…

続・安吾圭吾安吾圭吾

9月に「東野圭吾を読みはじめたら止まらなくなった」と書いたが、2ヵ月経った今も継続中。今年に入ってからの読書メモを見てみると、2005年1月から11月末までに読了した本がちょうど70冊。そのうちなんと32冊が東野圭吾さんの本だった。このままでは今年読ん…

安吾圭吾安吾圭吾

目標週1回更新。などど書いておきながら、月1回も危ないペースだ。9月も半ばに差し掛かったので、しょうもない内容だが、とりあえずここで書き込みを一つ。 ここのところひたすら坂口安吾全集を読んでいたので、ちょっと気分を変えて現代のミステリーをと思…

負ケラレマセン勝ツマデハ

筑摩書房版『坂口安吾全集』、最初から読みはじめてやっと12巻まできた。 前の版で通して読んでいるから、ほとんどの作品は読むのは2回目か3回目のはずなのに、けっこう忘れているもんです。「負ケラレマセン勝ツマデハ 」なんて今回も笑い転げてしまって、…