シナプスの笑い

 今年3月に創刊されたばかりの雑誌『シナプスの笑い』(年3回発行)の創刊号と第2号を読んだ。精神障害体験者および関係者の作品を中心とした雑誌で、発行元は「精神をつなぐ・ラグーナ」。この雑誌に関わっている友人に、既刊分2冊を送ってもらったのだ。

「精神をつなぐ・ラグーナ」のコンセプトは、当事者の視点から当事者の言葉で今世紀も「精神しょうがい」と呼ばれるであろう現象を世間に伝えることである。いまだ原因が解明されていないこの病気の特殊性を伝えるには当事者の「体験としての知」が不可欠である。「精神しょうがい」とは何かについて関心を抱いている方々が本誌を手にとり、漠然とでも何かを感じていただければ幸いである。また、当団体のコンセプトに共感し、雑誌に限らず、偏見を笑い飛ばす活動を創りたいと思っている当事者の参加を期待している。(「雑誌ができるまで」より)

 精神障害体験者による絵画を始め詩や小説などの文芸作品、体験談、看護職員・医師を交えての座談会といった様々な作品が掲載されていた。私は実際に医療の現場に関わっているわけではないので、あくまで読んだ印象を書いてみる。
 他者の眼を気にするあまりボロボロになっていった人の体験談、霊との戦いの様子を綴った“ノンフィクション”小説、自己愛と感傷の中で閉じてしまっている詩作品、等々と書けば、とても特殊な作品ばかりだと思われてしまうかもしれない。でも、実際に作品を読むと、とても真っ当なものばかりだった。多かれ少なかれ誰もが抱えていることを、過大に意識し、それに囚われてしまった人が、その思いを素直に表現しようとしている作品、といった印象を受けた。体験者の文章を読んでいて最も強く感じたのは、強烈な自意識だろうか。もちろん精神障害云々抜きで楽しめた作品もあった。少年の性の目覚めを描いた「少年とおじさん」なんかはけっこう感動ものだった。ぐっと抑えた文章で、淡々と語られる二人の会話、とくにおじさんの台詞が“人間として”とてもよかった。
 「最近では、統合失調症など精神科の病気は、気の病とかこころの病気ではなく、脳(神経)に原因があると分かってきました」から始まる“精神病からの回復”をテーマにした座談会も、初めて知ることばかりだった。ただ、下手に要約すると誤解を与えてしまうかもしれないので、これ以上は書きません。興味のある方は、「精神をつなぐ・ラグーナ」に直接お問い合わせを。ネットで検索すればすぐ出ると思います。