大往生の島

 2007年最初の読了本は『大往生の島』(佐野眞一著、文春文庫)。高齢化率日本一の山口県周防大島の、とくにそのすぐ隣にある離島、沖家室(おきかむろ)島のルポだ。一人暮らしの老人が大半の過疎の島でありながら、行政に頼らず、互いに助け合いながら明るく生きる老人たちの姿がなんとも潔い。
 御歳81歳という老人ボランティアの方の言葉、「人さまのお役にたったままぽっくり往くのがわしのたった一つの夢じゃ。そう思って、毎日仏さまに手を合わせちょるんじゃが、なかなかポックリ往かんのう、ワッハハハハ」。こんな元気な老人が次々と登場する。老人たちの台詞から明るさが伝わってきて、こちらまで楽しくなってくる。島から出ていった息子や娘から都会での同居を誘われても、最期まで島で生きることを選ぶ老人たち。もちろん楽しいことばかりじゃないんだろうけど(→「大往生の島」の現実)、決して強がりでもなさそうだ。
 過疎の土地を出てきた私にとっては、身につまされる本でもあった。私の生まれ故郷が、今、こんなに明るいとはとても思えなかったからだ。でも、そこにはもう16年も帰っていない。実家が引っ越した今となっては、もう二度と行くことはないかもしれない。
大往生の島 (文春文庫) 『かむろ復刻版〈第1巻〉第1号‐第8号(1914年9月‐1916年7月)』『かむろ復刻版〈第2巻〉第九号‐第一六号(1916年11月‐1918年6月)』『かむろ復刻版 (第3巻)