嘉瑞工房作品展にて

 御茶ノ水美篶堂ギャラリーで今日から始まった「嘉瑞工房作品展 ─活版印刷─」のオープニングにお邪魔した。主役の高岡昌生さんが美しい女性陣に囲まれているスキを狙い(というか、近寄るチャンスもないほど込み合っていた)、ほとんど独り占め状態で高岡重蔵さんからお話を伺った。
 「一冊の本は、(活字を)一人の職人が組み上げないといけない。さもないと、職人によってワードスペースの取り方に癖があるため、黒っぽいページと白っぽいページができてしまう」
 「いい物は高くて遅いもんだ」
 「彼女もいない奴にタイポグラフィは教えない。人類の半分は女性なんだよ。その女性を口説けない奴に、タイポグラフィを教えたってわかりっこない。タイポグラフィはコミュニケーションなんだ」
 この他にも、含蓄のある、ユーモアのたっぷり詰まった言葉をたくさん頂いた。“印刷”が伝達と伝承を担ってきた道具だと考えると、まったくもって失礼な話だが、重蔵さんその人を、そっくりそのまま印刷物にしたい、などと思ってしまった。重蔵さんのすべてが詰まった一冊の本。考えるだけでワクワクしてくる。でも、急がねば。
復刻版 欧文活字―付録・タイポグラフィ習作1942 My Typography