フィロソフィア・ヤポニカ

 中沢新一著『フィロソフィア・ヤポニカ』。京都学派の哲学者・田邊元(田辺元・たなべ はじめ)がまとめた「種の論理」という思想に関する解説書で、カバー、表紙、扉へと続く隙のない装丁に惹かれてつい買ってしまったのだが、中味を読んでびっくり。

「種」は多用体としてみずからのうちに否定転換性を潜在させているが、それは「個」の実践する行為的な自覚によらないかぎりは、徹底されて「絶対無」にたどり着くことはないのである。このとき「個」は単独な行者(行為的自覚をおこなう者)となって、「私」が「私」であることまでも否定して、有としての自分を否定しつくして死に、無の深淵深く落ち込んでいくとき、その無底の「底」から有を肯定する力がわきあがってくるのを自覚するようになる。こうして、いったん死んで、無の深淵に沈んだ「個」が、ふたたび新しい有として復活をとげるのだ。

 なんて部分は、まんま坂口安吾の「堕落論」ではないか。

フィロソフィア・ヤポニカ