死霊

 埴谷雄高著『死霊』。とにかくもう凄い作品です。

その名状しがたい幅の怖ろしさをまざまざとお前の眼前に思い浮べるためには、いいかな、思いのほかに詩人らしい閃きもあるお前がまさにこれまで持っていた胸のなかのがらくたの一切を投げ捨てその純一無垢の塊にだけまっすぐ向きあって、いわばかたちもない未出現のなかに快も不快もないぼんやりした無感覚のまどろみをまどろみつづけている不思議な無限とさて不快に駆られて目覚めかけたまましかも敢えて持ちきれぬ苛らだたしさに充ちみちた未出現をなお保ちつづけている不思議な無限がぼんやり向きあっている不思議絶妙な景観を思い描いてみろ!(「五章 夢魔の世界」より)

 ゴメンなさい。ワタシにはトテモ思い描けません……。

死霊(1) (講談社文芸文庫) 死霊(2) (講談社文芸文庫) 死霊(3) (講談社文芸文庫)